太宰 治 "ヴィヨンの妻"
「谷崎は女に優しく、太宰は男に優しい。」
或る友人の言葉だが、中々当たっていると思う。
(そもそも、僕自身評価できるほど両作家の作品を読み込んでいるわけではないが)
この本は、8編の短編小説からなるわけだが
各ストーリーそれぞれに、どうしようも無い男が現れる。
・親友気取りで他人の家におしかけ、酒をたらふく呑む男
・ある音を聞くと(聞こえると)急にやる気が萎える男
・妻子供を残し、遊び歩く放蕩者
等々
しかし、彼らは非難を浴びるでも無く愛すべきキャラとして描かれている。
そんな男たちの中で朗読したいシーンは、家庭の幸福の主人公津嶋修治と女のやり取りから
ラストへの下り。死後公開されたこの短編は当時の太宰の心情なんだと考えながら
是非声に出して読んでいただきたい。